国指定重要文化財菊屋家住宅

所蔵品紹介

松林桂月 筆「十声詩意図巻」

松林桂月 筆 「十声詩意図巻」
紙本着色 画巻・1巻 (部分)

松林桂月 筆 「十声詩意図巻」

この作品の制作契機となったのが頼山陽の十声詩巻である。
この詩巻は、萩藩士・内藤昌盈(まさみつ)が有栖川宮家に勤仕中、すでに詩文を通じて親交のあった山陽に依頼してつくってもらったものであり、以来、萩の菊屋家に伝来していた。
この詩に興味を覚えた松林桂月が、懇意にしていた菊屋孫輔よりこの詩巻を借り受け、画巻を制作することとなった。

桂月は、構想を練り直したり、描きなおしたりで、3年余りかけてようやく完成したという。
詩画一致を旨とする桂月の真骨頂を表す作品といえ、全巻を通じて桂月特有の穏やかで柔らかい筆致が冴えた作品。
また全面に枯淡な感覚があふれ、制作された昭和初期における桂月の作風の転機も感じさせる画巻である。